◼️ベルンハルトとヒースクリフが「_片思われ」「_片思い」を取得する話
◼️多分この後「善人の話」とか「黄昏の恋人」とかを通る
◼️BL
□登場
ベルンハルト
標準型 大人♂️ リーダー兼聖職者
一人称:私 二人称:君 男性(大人)口調
冷静沈着で勤勉な聖職者(異端審問官)。
ヒースクリフ
万能型 大人♂️ 盗賊
一人称:私 二人称:貴方 丁寧口調
私たちのリーダーであるベルンハルトは今日も彼の信じる神に祈りを捧げている。敬虔な信仰者であり聖職者の彼は、異端審問官として正しく人々を導くべく日々勤勉に働いている。
そんな彼がなぜ冒険者などというやくざな世界にも足を突っ込んでいるのかを私は知らない。冒険の最中、彼の信仰において許せないものに出会うことも多いのに、それでも彼は他者に手を差しのべ救おうとする。
そんな行為、以前の私であれば唾棄していただろう。だが、今の私は、彼の行いなら全てを肯定してしまうようになっていた。それが何故かはわからない。ただ彼を見ていると、彼のためになんだってしてやりたい気持ちになるのだ。
今日は私たちパーティーにとって“都合のいい”死体が出る日になる筈だった。実際、死体は転がった。だが私もまた深い傷を負い、スラムの路地で力尽きていた。
しくじった。
もう仲間たちの元へは戻れない。
ベルンハルト。
ベルンハルト……。
彼の名を繰り返しながら目を閉じ、意識を閉ざしかける刹那、
「ヒースクリフ!」
私の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
目を覚ます。天国でも地獄でもない、薄汚れた天井が見えた。状況を把握するべく部屋の中を見回すと、ベッドのすぐ隣の椅子に腰掛けたままうたた寝している姿に気付いた。
ベルンハルト。
彼が、そこにいた。
「ベル、……ハルト……?」
呼ぼうとした声はひどく掠れて小さかったが、すぐに彼は目を覚まして私を見て目をみはった後、手を握ってきた。温かい。
「よかった、ヒースクリフ……」
握った手に額を押し当て、よかった、と繰り返す。それから手を離し──名残惜しく思ってしまった──、私に布団をかけ直す。
「傷はふさいだが、もう少し休んでおいた方がいい。何か欲しいものはあるか?」
「……何があったか、聞かないんですか」
スラムで血を流し倒れていた私が、何か面倒なことになっていることくらいはわかるだろう。ベルンハルトは私を見て、懺悔でもするかのように静かに口を開いた。
「私たちにとって都合のいい死体が都合のいいタイミングで出ることには気付いていたし、そういう時に限って君の帰りが遅いことにも気付いていた」
「……」
「それでも君に……君の行為に口を出さなかったのは、それはきっと必要なことなんだと思っていたからだ。だが……」
ベルンハルトの手が布団を握り込むのが見えた。
「そのせいで君が死ぬようなことになるのは、嫌だ。……それだけは知っておいてほしい」
濡れたような黒い目が私を見ている。じわじわと胸の奥が熱くなるような気がした。ああ、これは、多分。
「……気を付けます」
「ならいい。君が必要だと思うなら、君の判断において、君は自由にしていい」
ベルンハルトは私を否定しない。色々言いたいことはあるだろうに私の行動を制限しようとはしない。それが嬉しいのに、少し寂しいと思ってしまった。
「じゃあ私は行くぞ、ゆっくり休んでくれ」
「待って、」
思わず引き留め、
「キスして下さい」
「……え?」
声が震えなかったのは今まで裏社会で生きてきた経験の長さゆえである。ベルンハルトは不思議そうにこちらを見ていて、私は寂しげな声音を作って続ける。
「眠れないので……」
「ああ、」
なるほど、と頷いたベルンハルトが私に疑念を抱いている様子はない。そっと私の髪を撫で、額へと唇を落とす。
「おやすみ、ヒースクリフ。君にいい夢が訪れますように」
低く穏やかな声。うっとりと目を細める私の頭を撫で、ベルンハルトは部屋を出ていった。
ベルンハルトは聡明だが、愚かだ。神を信じているのもそうだが、それ以上に、私を仲間として信じているのがどうしようもなく愚かだ。私は……私はきっとずいぶん前から、貴方を仲間と同じように見てはいないのに。
私は貴方に恋をしている。
どうしようもない想いに、身を焦がしている。
【獲得】
ヒースクリフ _片思い
ベルンハルト _片思われ